2008年7月18日金曜日

My favorite 8-2

             (2005年5月撮影:Hollywood Cinema)
Cinema 2 (Hollywood Cinema)
AUT(オークランド工科大)のコミュニケーション学コースでの科目のひとつに Media writing(マスメディア ライティング)というのがあって、提出課題のひとつに、新聞に載せることを想定して興味ある人物や建物などを取材し、写真付き記事としてまとめること、というのがあり、私は躊躇することなく、一度見に行った映画館を取材することにした。これが、Avondale (アヴォンデール)にある Hollywood Cinema(ハリウッド・シネマ) だった。

その時見た映画は、劇作家Arthur Miller(アーサー・ミラー)原作の"Crucible(るつぼ)" だった。英語で原作を読み涙、涙したことがあるだけに、予想通り、映画化されたものはがっかりするできだったが、その映画館はとても印象深かった。古めかしいドアを押して中に入ると、右側にチケット売り場兼スナックや飲み物売り場があり、頭の薄い気さくそうなおじさん(この方が後に課題のために取材することになるJan Grefstad 氏)が立っていた。少し奥まったところに目に付くのが、場違いな?アンティークで素晴らしく優雅なパイプオルガン。古めかしい絨毯がひかれた階段を上がって2階に(正確にはNZでは1階)。とても古い建物(1915年)で、エアコン設備は無く、天井にはクラシックな4枚羽根(3枚?不確かな記憶?)のファンが取り付けられている。夏だったので通風のためか後ろの窓が少し開けられていて、窓に下げられた重厚なビロードのカーテンが風で少し揺れ動く度に光の筋がスクリーンに反映し、画面が白くぼやける。まるで、60年代にタイムスリップしたかのような気分になる。周りを見回すと、観客は、数えるほど(7~8人ほど?)しかいない。これで、やっていけるのかしら?と余計な心配をしてみる。

(以下、1997年に、館主に取材して書いた記事の内容を、かいつまんでご紹介します)

・・・・1915年にアヴォンデール タウンホール(多目的ホール)として建てられた古い建物は、数代に渡って経営者が変わり、映画館として経営されていました。Jan Grefstad (ジャン・グレフスタド)氏は、無類の映画好きで、昼間教師をしながら夜は、この映画館で映写技師として働いていました。1966年3月1日、ついに彼は、映画好きが高じて教師の仕事を止め、友人のメルローズ氏とふたりでこの映画館を買い取ったのです。名前も“The Grosvenor Theatre”から、“Hollywood Cinema”に変え、開館しました。最初の上映映画は、“55 Days at Peking(北京の55日)”で、full house (満員) だったそうです。しかし、翌月4月になって、メルローズ氏は経営から手を引き、彼は、事実上一人で映画館経営に乗り出したのです。「6ヶ月も続かないだろう」という彼の友人たちの声をよそに、30年以上(当時)ひとりで経営してきました。映画放映の他に、彼は、クラシックなパイプオルガン(*由緒あるWurlitzer 製)の演奏会を、定期的に、あるいは機会あるごとに演奏家を迎えて開催しています。・・・・

余談ですが、一人でこの映画館を切り盛りしていた映画館主、Grefstad氏の車のナンバープレートは「CINEMA」でした。

2005年5月に、なつかしくて、アヴォンデールのハリウッドシネマを見に行ってみた。残念ながら、映画はその日は、ナイトショーだけで、閉館していたが外観を撮ることができた(上)。昨日、インターネットで Hollywood Cinema のサイトを見つけ、まだ無事経営されているようでホッとしたが、説明を読んでみると、経営は、もはやJ. Grefstad 氏ではなくなったのか(亡くなった?)、「Jan Grefstad のハリウッドシネマ」として、地元有志(?)の人々の手によってなされているような雰囲気だ(彼の消息を知りたくて、サイト経由でメールを出してみたがまだ返事をもらえない)。あのWurlitzer オルガンは、なお健在で、8月10日には演奏家を招いてコンサートが開かれる模様。Aucklandにいないので行けなくてとても残念。

Auckland 在住の方、是非演奏会を聞きに行ってください。そして、映画狂の貴方、オークランドに行ったら、アヴォンデールにあるこの素敵な映画館を、是非一度覗いてみてください。

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